「キャリアを運に任せるのはもったいない」、Coral Capital Talent Managerの津田氏が見るキャリアの考え方

「キャリアを運に任せるのはもったいない」、Coral Capital Talent Managerの津田氏が見るキャリアの考え方

Coral Capital(コーラル・キャピタル)は、500 Startups Japanの創業チームによって立ち上げられたVCです。海の生態系の基盤を支えるサンゴ礁(Coral)のように、起業家たちを育む基盤になりたいという社名の通り、起業家をスケーラブルにサポートするためのプラットフォームを構築しており、資金調達やPR、投資先スタートアップ間のコミュニティづくりの他、成長のコアとなる採用活動の面でスタートアップをサポートしています。

今回はその中で投資先企業の採用活動を中心にスタートアップを支援されているTalent Managerの津田氏にお話を聞きました。Coral Capital https://coralcap.co

 Coral Capital(コーラル・キャピタル)は、500 Startups Japanの創業チームによって立ち上げられたVCです。 今回はその中で投資先企業の採用活動を中心にスタートアップを支援されているTalent Managerの津田氏にお話を聞きました。

プロフィール:Coral Capital Talent Manager 津田遼氏
早稲田大学法学部卒業。日本GE株式会社のファイナンス部門でFP&Aアナリストとして経験を積んだ後、グリー株式会社に人事として入社。グリーでは、中途採用、組織人事(HRBP)、米国子会社人事、社内活性、派遣採用/労務管理、BPOなどに従事した後、500 Startups Japanに参画。Coral Capitalでは500に引き続き、投資先スタートアップの採用支援とコミュニティ構築・運営を行なっている。
twitter: @tsuda_ryo

━━まずは、今携わっているお仕事について教えてください。

Coral Capital(以下、Coral)が投資をさせていただいているスタートアップ各社の、採用活動のサポートを行っています。具体的には、投資先スタートアップ20社弱がプレゼンをし、250名前後の方にご参加いただくCareer FairBilinguals and Gaijins in Startups、特定のテーマについてスタートアップの各部門の責任者がパネルディスカッションをする月次の勉強会などの場をプロデュースしたり、個別の面談や飲み会などのカジュアルな場を設けることで、投資先スタートアップと候補者の方の接点をつくり、中長期的なご縁に繋げています。詳細は、Coral Community ※1のページをご確認ください。

「キャリアを運に任せるのはもったいない」、Coral Capital Talent Managerの津田氏が見るキャリアの考え方

スタートアップ企業と行っているキャリアイベントの様子。Coral Capital提供

キャリアを大きく変えたサンフランシスコでの経験、そして偶然の出会いで数人のスタートアップへ 

━━津田さん自身が大手やメガベンチャーといわれる会社から、スタートアップであるCoral Capitalにジョインされるまでの経緯を教えてください。

私は、小4から中3までの5年間をアメリカのサンディエゴで過ごしました。就職活動時から、ヒト・モノ・カネの中で特にヒトに興味がありましたが、最低限数字のセンスを持っておいた方が良いだろうと感じ、新卒ではGEの日本法人のファイナンス部門に入りました。仕事をしている中で、自分の興味や、強みはヒトの部分にあることを改めて痛感し、グリー株式会社に人事として入社しました。

グリーでは、人事として色々な経験を積ませてもらいました。組織人事(HRBP)、組織活性、採用、BPOなどの他、半年間アメリカ(サンフランシスコ)の子会社で人事評価まわりなどもやりました。

サンフランシスコでの半年間の経験が、その後のキャリアを大きく変えました。世界のスタートアップ文化の中心である場所に半年間もいられることを最大限チャンスに繋げたいと考え、平日の仕事終わりや週末のほぼ全てを、現地のスタートアップに関連するイベントやStartup Weekendなどワークショップ、現地で知り合った方数名との起業アイディアのブレストなどに費やしました。

そういった経験から、スタートアップやアントレプレナーシップにどんどん惹かれていき、帰国後もスタートアップに何かしら携わる仕事がしたいと常に強く考えるようになりました。

そんな中、Coral Capital(当時は500 Startups Japan)代表のJamesと偶然知り合い、彼自身が強いアントレプレナーシップを持って、VCとして日本のスタートアップエコシステムを大きくしていく構想に強く惹かれ、入社を決意しました。

━━「スタートアップに興味はあるけど、リスクを考えると一歩を踏み出せない」という方も多いかと思いますが、グリーという1000名以上のメガベンチャーから、5名しかないある意味スタートアップに近いVCに転職された津田さんはどうでしたか?

直感としては、ほぼ即決でしたが、僕にとって大きな決断だったので、最終的な結論を出すまでには数週間かかりました。

判断の軸は、攻めと守りの2つ。

まず、攻めの考え方でいうと、「人生、いつ不慮の事態で死ぬかもわからない。万が一、明日死ぬとなった際に、これまでの人生味わい尽くせたと満足して死ねるのか?」と自問自答しました。結果、「こんなにエキサイティングな仕事が目の前にあるのに、やったことがない、前例がない、ロールモデルがいない、といった些細な理由でその機会を見送っていいのか?いや、そんなはずはない。」と自分自身を納得させられました。

守りの考えでいうと、「スタートアップへの転職はリスクというが、本当にリスクなのか?」ということを突き詰めて考えました。結果、「本気で仕事に取り組んで結果を出すことで自分の市場希少性を上げることができれば、たとえ会社の経営が困難になっても十分市場ニーズはある(転職できる)。むしろ、今の自分にとってより成長できる機会を見逃す方が、中長期的なキャリアのリスクになる。」と結論づけることができました。

あともう一つ追加すると、自分の考えだけじゃなく、自分を理解していて心から信頼できる人にフィードバックをもらう事もいいと思います。僕の場合は、奥さんに相談した際に「チャレンジしようとしている仕事の話をしている時、とても生き生きしてて楽しそうだし、仕事内容もとても向いてると思う!」と言ってもらえたことも大きな後押しになりました。一人で考えると悶々としがちですが、信頼できる第三者の意見も聞くことで自分の決定により自信を持てるようになると思います。

結論は、結局最初の0.5秒くらいで閃いた直感と変わらないんですが(笑)、攻めと守り、そして周りからのフィードバックをもらうことで、ロジカルにその直感を裏付けることができ、自分をより納得させて一歩を踏み出させることができた、ということになります。

スタートアップで働く魅力は「青春ができること」

━━津田さんが日々投資先のスタートアップの方々と接している中で、スタートアップで働く魅力はどこにあると感じていますか?

一番大きいのは、青春ができることだと思います。

会社として成し遂げたいミッションに向かって、社員一丸となって日々プロダクトを開発・改善し、ものすごいスピードで世の中に広めていく。リソースがたくさんある大企業とは異なり、最小限の人数でその大きなミッションを実現させるために動いていかないといけないので、一人一人の社員のアウトプットが会社全体の業績に与えるインパクトも、はるかに大きい。例えば1000人、10000人の大企業であれば、自分の存在は会社の1/1000、1/10000となりますが、10名、100名のスタートアップであれば、全リソースの1/10、1/100になります。そして社員数も少ないので、他部署とも密に連携を取りながら、スピーディに意思決定をし、アクションにつなげていくことができます。もちろん、代表との距離も近い。自分の組織への影響度が大きい、全社横断の連携が強い、意思決定がスピーディ、最高意思決定者との距離感が近い、といった要素全てが、学生時代の部活に勝るとも劣らない青春をもたらしてくれると感じています。

もう一つは、変化が多い環境の中で、幅広い領域を見た上で、多くの意思決定をしていかないといけないため、経営者視点を磨きやすいことがあると思います。例えば人事という職を一つとっても、大企業であれば評価方針や採用方針を決めるのは、時間をかけて部長や本部長になってからとなりますが、スタートアップで例えば一人目の人事として入った場合、それらを経営陣と議論しながら自分で決めていかなければなりません。もちろん、最初から全てを完璧にできるわけではありませんが、人は与えられた役割によって成長していくので、そういった立場に若い段階から身を置き、意思決定をたくさんこなしていくことで、大企業で働くよりもはるかに早く経営者視点に近づくことができると思います。

スタートアップに向いている人とは?(マインドセット面)

━━スタートアップには、どんなマインドセットを持った人が向いていると思いますか?

まず、マインドセットについては、大きく3つあると思います。

1つ目は、舗装された道を進むよりも、ジャングルを切り開きながら道を自ら作っていくことが好きであるかということです。スタートアップは前例がない中で、日々自ら考えて最も良さそうな仮説を立て、実行していかなければならないので、そういった未知の世界を開拓していくことに快感やロマンを感じる人が向いています。逆に、そういった不確実性が多い環境を地に足がついていないと感じる方や、不安に感じる方は、向いていません。

2つ目は、頭と手を総動員して、スピーディーにPDCAを回していけるかということです。これは大企業、スタートアップ問わずですが、批評ばかりして手を動かさない人や、大して考えずにただただ手だけを動かす人は良い戦力になりません。特にスタートアップでは、取り巻く環境も、組織もどんどん変化していくので、高速で考え、高速で実行し、分析してまた実行するというサイクルを回していく必要があります。

3つ目は、自分の役割はこれだと決めつけず、事業の成長にとって必要なことを積極的に拾ってやっていくということです。スタートアップでは、これまで担当する人がいないような新しい課題が日々発生しますが、全分野の専門家を雇うほどリソースもありません。一方で課題のボールを落とすわけにもいかないので、既存の社員がそれぞれ想像力と行動力を発揮し、自分の専門から守備範囲を広げて課題を拾っていく必要があります。なので、専門家として特定の領域の仕事のみやりたい方には、向いていません。

スタートアップに向いている人とは?(スキルセット面)

━━スキルセットはどうですか?新卒でもスタートアップに入れますか?

求められるスキルセットはスタートアップごと、職種ごとに変わってきますが、一つ言えるのはアーリーステージになればなるほど、即戦力以外の採用(ポテンシャル採用)を受け入れる余裕がないということです。

大企業であれば、数千人、数万人と人がいるので、毎年新卒を一括で数十人から数百人とっても、彼らを養う金銭面でも、教育する人材面でも、十分余裕があります。一方で、特に100名未満のアーリーステージのスタートアップでは、資金は潤沢にはなく、人もギリギリのところでやっているので、時間をかけて完全なるポテンシャル人材である新卒の面倒を見るのは難しいことが非常に多いです。

ただ、スタートアップでも、100名を超えて、業績的にも、人員的にも少し余力が出てきたところなどは、中長期的に優秀な人材を獲得するために、新卒採用を開始しているところもあります。

また、ビジネス経験がものをいうビジネス職とは異なり、エンジニアやデザイナーについては、学生でも実力次第で早い段階で即戦力となれる場合もあります。

ビジネス職でどうしてもアーリーステージスタートアップをファーストキャリアにしたい場合は、例えばインターンであれば、企業側も学生側もリスクが少なく開始することができるので、まずはインターンとして入って、半年〜1年くらいで圧倒的な成果を出すことができれば、そこから正社員採用という道が開ける場合もあります。

ただ、スタートアップだと入社後に学べる先輩や上司の数も社内では限られてくるので、本当にその人たちと一緒に働くことが自分のキャリアにとっていいのかを、しっかり見極めることが大事です。この人たちから学びたいという圧倒的な確信や覚悟がなければ、良いとされる大企業に入って多くの先輩・上司の中から自分にマッチする人をゆっくり探して学んで行った方が、自分が望むキャリアに繋がる可能性が高まるんじゃないかと思います。

「キャリアを運に任せるのはもったいない」、Coral Capital Talent Managerの津田氏が見るキャリアの考え方

スタートアップへ転職する際に自問すべき4つの質問

━━スタートアップへの就職を検討する際は、どんな点をみるべきですか?

大きく分けると、4つの点はおさえておく必要があると思います。

1つ目は、事業ドメイン、事業内容、企業ミッションに自分が共感できるか、本気になれるかという点です。大企業の場合、活躍している方は当然ながら強い当事者意識を持っているのですが、そうではない人が入ったとしてもしっかり企業として回る仕組みができています。対して、スタートアップでは、一人一人の企業に与える影響力が大きく、多くの意思決定も求められてくるので、事業ドメイン・事業内容・企業ミッションに共感できていないと、相当辛く、成果を出すことも難しいです。

2つ目は、企業の規模と、そこで自分が求められている役割と、自分が求めるそれとがマッチしているかという点です。創業者のみの3人の会社に初の営業として入るのか、100名の会社で営業部隊が30人いる中に入るのかでは、求めれる役割が大きく異なってきます。どちらがいい悪いではなく、自分はどんな役割を担いたいのか、担えるのか、ということをしっかり考えて、企業の規模を選ぶ必要があります。

3つ目は、企業のカルチャーや、そこにいる人たちとウマが合うかという点です。日々どんどん変わっていく環境の中、部活以上に濃い時間を同じメンバーと過ごし、密に連携していくことになるので、ここが合わないと致命的になります。スタートアップの場合人数も少なく、大企業のように合わなかった場合に違う部署に異動してリセットするということは基本的にはできず、なんとなく日々仕事をするという選択肢もないため、大企業以上に慎重に見極める必要があります。

4つ目は、給与や働き方といった条件面です。給与はいくら貰えるか?就業時間はフレックスなのか、固定なのか?リモートワークや副業はできるのか?何時頃までオフィスで働く空気感なのか?仕事は金を稼ぐためだけだと割り切るライスワーク思考の方にスタートアップは絶対向きませんが、仕事を通じて人生の意味を見出したいというライフワーク思考の方であったとしても、ワーク以外で望むライフを実現できるかは重要になってくるはずなので、ここもしっかりマッチ度を確認する必要があります。ここについては、最初からそれを前面に出して企業の方に聞くとライスワーク志向色が印象として強く残ってしまうので、1から3を確認する中で、合わせて自然に確認していくのがおすすめです。

「キャリアを運に任せるのはもったいない」、Coral Capital Talent Managerの津田氏が見るキャリアの考え方

キャリアを運に任せないために、津田氏が行なった3つの自己分析ステップ

━━これからキャリアを考える学生の方や若手の方に向けてアドバイスをお願いします。

 僕もまだまだキャリアの半ばですが、強く感じるのは、キャリアを運に任せるほどもったいないということです。

世の中には、目の前のことを一生懸命やって結果を出していく中で、やりがいを感じるいいキャリアを築けている方も一定数います。自身の強み、価値観、興味関心と、会社の事業内容、カルチャー、配属部署、チームメンバー、上司など、様々な要素の組み合わせが奇跡的にマッチすれば、そういったことも十分発生すると思いますし、そういったご縁に恵まれることはとても幸せなことだと思います。

一方で、特に仕事に対する価値観や、人生観が多様化している現代社会においては、ドンピシャなマッチングを運よく得られる可能性は従来よりも圧倒的に低くなっています。なので、それを運任せにするのは人生として相当もったいないので、マッチングの確度を上げていくアクションをしていくことが、大事なんじゃないかと考えています。

僕は、1社目、2社目通して、かなりキャリアに迷ったので、その過程でどうすれば自分の強みや興味が活き、自分の可能性を最大化できてやりがいがあるキャリアを築くことができるかということを、深掘りして考えてきました。

具体的にやったことは、3つです。

まずは、日々仕事をしたり、私生活を送っている中で、自分がワクワクした瞬間、脳内にアドレナリンが大量発生した瞬間、ゾーンに入った瞬間、苦手意識を感じた瞬間、嫌だなと感じた瞬間などについて、それを感じてから出来るだけ早いタイミングで、ノートに「いつ何が起きて、それにどう感じたか。それはなぜだと思うか。」ということをメモとして記録します。それを1年以上、ひたすら続けました。

次に、毎週、毎月、四半期ごと、といった区切りのいい時に、少し時間をとってそのノートを見返すようにしていました。そうすると、xxという時も、yyという時も〇〇と感じたので、自分は△△に興味があるのではないか?という仮説を立てることができます。

その上で、そのできた仮説を検証するアクションプランを作り、実際に実行していくことで、その仮説の検証を日々行いました。△△に興味があると思って、xxをやったが、あまり心が高ぶらなかったので、本当は◯◯に興味があるかもしれない、など。

その3つのステップのサイクルを、日々ひたすら繰り返す中で、ある時びびっと来るものに出会えます。来週かもしれないし、来年かもしれないし、5年後かもしれない。RPGのレベル上げや、筋トレのバルクアップ的に、やった分だけ一次関数的に視野が広がってくる、というよりは、地道にこれを繰り返している中で、ある日何かのインプットや出会いをきっかけに、一気に視野が広がるという、右肩上がりの階段的な曲線のイメージの方がしっくりくると思います。

なので、結果がすぐに見えなくても地道に、日々自己分析をしっかり続けることが、大事なキャリアや人生を運に任せずに自分で切り開く上でとても大事なことなんじゃないかと考えています。最初は色々面倒くさいですが、一旦日々のルーティンに組み込んで習慣化してしまえば、歯磨きやトイレに行くように自然とサイクルを回せるようになるので、圧倒的にコスパがいいライフハックなんじゃないかと思います。

━━ 本日はありがとうございました。

※1 Coral Communityについて

Coral Capitalでは、スタートアップとそこでのキャリアに興味がある方を繋ぐ “Coral Community” というコミュニティを運営しています。毎月Coralが開催するスタートアップイベントの情報や、投資先スタートアップとのカジュアル面談の機会の提供など、中長期的にスタートアップでのキャリアを検討する上で役立つコミュニティになっています。ご興味がある方は、ぜひこちらから詳細をご確認ください。

 (文・写真:高島優季)(校正:浅田 茉美)  

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