「社会をより良く」お金じゃない、そこに懸ける大切な想い

メリービズ Hiroki Kudo

仕事って一体何のため?もっと言えば、大学に行くことや留学にどんな意味があるのでしょうか。メリービズ株式会社を立ち上げた工藤さんは、常に目の前にある物事の意味を考え、問題意識を原動力に行動してきました。帰国子女で英語話者の工藤さんから見たMBAについてのお話も必見です。

メリービズ Hiroki Kudo

【工藤 博樹 略歴】 1975年7月生まれ。カナダ、シンガポール、フランス、日本育ち。六甲学院高校出身。 2000年東京工業大学修士課程修了。 2000-08年日本IBM グローバルプロジェクトのプロジェクトマネージャー担当。 2008年INSEAD MBA取得。経営戦略事務所にて大手企業向け経営戦略をコンサルティング。 2010年Locondo.jp立ち上げる。2011年スローガン新規事業パートナー、GREEグローバルアライアンス担当。 2011年7月にリブ(株)(現メリービズ(株))創立、代表取締役就任。一般社団法人Fintech協会創立、現在理事も務める。
Twitter: https://twitter.com/hirokii

【メリービズ株式会社 概要】 https://merrybiz.jp/
設 立:2011年7月4日 資本金:321,969,500円(芙蓉総合リース、オプトベンチャーズ、アクリーティブ、経営陣) 所在地: 東京都中央区日本橋本町4-15-1 タカコ―ビル6F
事業内容:中小企業向け経理代行サービス

カナダで生まれ育った幼少期

ー工藤さんはカナダ生まれなんですね。

父の仕事の関係で幼少期はカナダで過ごしました。生まれた時から10歳まで、カナダの普通の公立の学校に通っていました。だから感覚としてはむしろ、日本に来たという感じです。カナダで育ったので、基本的なアイデンティティは外国人に近いものがあると思います。

 ー日本語の教育は受けなかったのでしょうか?

カナダでは通信教育と、土曜日にボランタリーで運営している日本人学校みたいなのにちょっと行ったりはしていましたが。あとは全部現地の学校です。

それから小学校5年生で日本に渡り、中高・大学は日本の教育機関で過ごしました。

ー日本に来た時はまったく違う文化で苦労されましたよね。

そうですね。当時移住した先が神戸だったので、関西弁が分からず苦労しました。カナダでやってきた学習が標準語に準拠したものだったので、こちらの言うことは理解してもらえますが、相手の言っていることが分からないということがよくありました。

ー生活の基盤を日本に移してから、留学したいと考えたりしませんでしたか?

高校の時はホンダやソニーなど、日本のメーカーでエンジニアをやろうとぼんやり考えていたので海外はあまり視野にありませんでした。

ーでは、学生時代にスタートアップっていうのもあまり考えなかった?

大学院の頃に、当時は珍しかったですがスタートアップでインターンしていたんです。サイバーエージェントが出てくるちょっと前の頃で、通信会社出身の方が3人でやっているイベント会社でした。その時にはすでにスタートアップで働きたいと思っていたかな。領域は今やっているITと全然違うし、たまたまやっていたあるバイトのような感じですが。

けど、今と違って自分が起業するイメージはなかったです。もともとリーダー体質ではなくて、誰かのサポートをする参謀のような人になりたいと思っていたので。東工大卒業生の先輩でもある大前研一さんみたいな立ち位置がいいなと考えていました。それで、日本IBMに就職したわけです。

一風変わった就職活動の基準

ー就職活動はどんな基準で?

当時MOT(技術経営。MBAのエンジニア特化版)を学びたいと思っていて、留学を前提として、大手中心に体制がしっかりしているところを選びました。今後のキャリア形成にプラスに働くようにと。

ーどうしてMBA、特にMOTを学びたいと思ったんですか?

東工大って当たり前ですが優秀なエンジニアがいっぱいいるんですね。でも、個の人たちの能力がビジネスの成功に結びつかないのはなぜなのかと疑問に感じていました。ビジネスが成功するには、エンジニアリソースと、マーケティング営業リソースなどを全部統合して、1つのプロジェクトで素晴らしい製品が出た時に、それがちゃんとユーザーのニーズに届いて初めて商業的な成功というものがあるんです。

けど経営的な観点が欠けていると、一方的なプロダクトアウトになってしまったり、商業的には結局失敗してしまう。

ーエンジニアはモノを作るのだけが仕事だと考えがちですね

 自己満足でプロダクトを作るのではなく、もうちょっと全体を見れる人にならないとダメだと思ったので。なので東工大も途中から、いわゆる理系の授業を受けなくなって、経営や、企業アライアンスなどの授業ばかり受けていました。

 ーそういう学生は東工大の中では珍しかったのでは?

そうですね。みんなは普通にメーカーの研究開発とか行くのですが、全然そこは興味がなかったです。実は大学院時代に、途中でMOTを受けに修士の途中で行こうと思ったのですが、社会人経験がないとMOTを受けても仕方がないという話を聞いて、それもそうだなと。 そういう意味では社会人になって3,4年くらいでやめようと思っていたので、得られるものが一番多いところに入ろうと考え、教育体制がしっかりしているというIBMに入社を決めました。

結果としては、8年間もIBMにいることになったのですが。

ー8年間いたのは、業務が楽しかったから?

最初はITのシステム寄りだったのが、経営の要素が入ってくる業務寄りの仕事にシフトしたタイミングがあって。かなりクライアントに入り込んで、代わりに名刺を持って交渉に行くようなところもやってたんです。そういう仕事が結構楽しくて、気付けば8年が経っていました。そんなある日大学のサークル時代の友人がMBAを受けたという話を聞いて、このままここにいたらヤバいと気付いてMBAについて調べ始めたのが留学のきっかけです。
メリービズ Hiroki Kudo

人脈を求めてMBAへ

ーMBAはどちらに?

インシアード(INSEAD)というMBAです。シンガポールとフランスにキャンパスがあり、両方通えるので、交互にシンガポールとフランスに通いました。

ーやっぱり会社は辞めて行ったんですよね。

いや、休職という形で。なので家族には特に反対されなかったですが、上司からは猛反対されて。調整が本当に大変でした。休職中は給料もなくて、完全に自費での留学です。1,000万円くらいかかったのでお金がカツカツで、奨学金も頂いたのですが、それでも足りず一部教育ローンでお金を工面しました。

妻は日本で働いていたので、単身で旅立ちました。 

ー受験は、英語はもともとできるから苦労はなかった?

帰国子女なのでTOEFLは問題なかったのですが、GMATで手こずりました。元々テストが得意な方ではないので、何度も練習して。結果、インシアードしか受けていませんが無事に合格できました。

ーこのタイミングでのMBAはやはり、起業を意識してのものだった?

経営コンサルタントを経て起業したいという夢があったので、起業は意識していました。

IBMに入ってからはマネジメントの重要性を感じる機会が多くて、上司が変わればプロジェクトの進み方も全然違ってくるんですよね。良くない時に「あの上司はダメだ」って言うんじゃなくて、じゃあ自分がマネジメントすればいいじゃないかと。

文句言うのは簡単ですが、自分ならどういう会社を作るか、というところまでコミットして初めて文句を言える立場になると思うので、やはりマネジメントを学ぶことが必要だと思ったんですよね。 

―通い初めてみて、学校はどうでしたか?

僕はインシアードに通うのに1000万くらいかかったのですが、1000万でそのコミュニティを買うつもりで行きました。インシアードも素晴らしい先生や授業もありましすが、今の時代それは本等で学べます。。本当の価値はそこにいる優秀な方に触れることでした。そういう意味では想像通り。

 授業はやはり大変でした。僕はITエンジニアなので、ファイナンスやアカウンティングやストラテジーをやったことがないんです。理系なので統計学はある程度分かりますが、MBAにおいて自分の強みが生かせるところってあんまりなかったです。

インシアードの良かったところは、成績を公表しないところですね。成績発表があれば成績のプレッシャーで自分の得意な分野の授業ばかり受けちゃうから、あまり勉強にもならないでしょう。僕は卒業後コンサルタントになりたかったので、不得意な戦略関連の授業ばかり受けていました。大変でしたが身になっています。チャレンジできる環境を用意してくれるという意味でも、インシアードは今でも良い学校だと思います。

 ―期待したコミュニティの方はいかがでしたか?

 非常に多様性がありました。クラスに修道士がいたり。すでに起業している人、家族でヘッジファンドやってる人、ファミリービジネス持ってる人、空軍の人とか。特に海外の人脈を作りたかったので、当時の友人たちには今でも相談することがあります。近しいビジネスをやっている友人に、あなたの国ではどうなってるのとか。エンジニアがいない時にスタートアップやっている友人に聞くと、開発したプログラムをそのまま譲ってもらったこともありました。会社の同期だと競争関係があるけど、同級生なら利害関係があまりないのでフランクに話が聞けていいですよね。MBAに行った一番の財産は人脈だと思っています。

 ―MBAが終わって、何か変化はありましたか?

今まではITの領域のプロダクトマネジメントだけだったのが、ファイナンスをはじめとして色々な仕事を見ることで、ビジネスに対する視野がかなり広がりました。付き合う人も日本だとIT業界の人だけなのが、こちらだとヘッジファンドをやっている人までいて、当たり前のことですが、世界はとても広いということを感じることができるんです。
(INSEAD卒業5周年の同窓会写真)

起業までの道のり

―その頃から、起業というイメージもだいぶできてきましたか?

 MBAが終わってからは、一旦借金を返すために戦略コンサルティングファームに予定通り行って、そこで1年ちょっと働くんですが、やはり自分に合わなくて辞めて、インシアードの繋がりでいくつかスタートアップのお手伝いをしました。いきなりそこで起業するのではなく、まだテーマも決まっていなかったし、まだ正直勇気がなかったんです。

友人のスタートアップに半年くらい在籍する中で、スターティングチームを任されたりもしたので、かなり大変な作業ではありましたが、初めてのことでもやろうと思えばできるんだという自信につながりました。起業の分野についてもあまり制約をつけずに、未経験の分野でも良いのではないかと。このようにして起業のイメージが具体的になっていきました。

ーそれで今のメリービズの前身であるリブ株式会社ができるわけですね。いざ法人を立ち上げるとなると、やっぱり怖くなったり、周囲に反対されたりはなかったですか?

怖いというのはなかったです。自信過剰バイアスで成功するだろうなと思い込んでいました。でもその思い込みがなかったとしても、お金儲けと関係なく将来の世代のためになることがしたいという気持ちがはっきりしていたので、それ以外の生き方が考えつきませんでした。それは今でも同じです。

家族の反対については、すでに副業でコンサルタントとして起業していたし、留学したりもしてたから、この人変わってるなとある程度理解してもらえていたように思います。嫁ブロックみたいなのはなかったです。 

ー起業してもう9年目ですが、どんなことを感じますか?

思ったより全然時間がかかるし、自分の力不足を感じることはしょっちゅうあります。その中で、自分は多少成長はするけれども、それ以上に色々な仲間が加わってきてくれたおかげで、自分一人ではできなかったことを実現できていると実感しています。

 ―MBAで学んだことは経営に生きていますか?

 ちょっと面白い問いかけをされたことがあって。「スタートアップのマインドセット」という学びの一環なんですけど、「仮に無限にお金、時間、人脈、あらゆるリソースがMAXあったら今何をしますか?」という質問について考えるんです。一瞬、あほな質問だと思うでしょう?でも、よくよく考えてみるとお金も時間もあれば遊ぶのかと思いきや、すぐに飽きちゃうから遊ばないと思うんですよね。億万長者でお金なんて減らないくらい持っていたとしても、仕事をするだろうなと。仕事を通して社会をどれだけよくできるかが大事なのではないでしょうか。今僕がやっている事業もそういった考え方に基づいています。

国が違えば、戦争や飢餓で明日死んでしまうかもしれないような、厳しい環境の人もいる。けど、自分はチャレンジできる環境や立場にある。そこで何もしないのはナンセンスだと思うんです。いい教育を受けさせてもらったので、それをただ自分が儲かるために使うのではなくて、世界のためになるようなチャレンジをしたいと考えています。

メリービズ Hiroki Kudo(チームメンバーとサービスローンチ2周年を祝って

メッセージ

ー就活する学生にはこういうことをしておいたほうがいいとか、ご自身の反省も含めてありますか?

 僕は大企業に入社するのも良いと思っています。IBMに入ったのもとても良かったし、大企業はこうやって動くんだとイメージできるのは、その経験があったからこそだと思います。一方で、個人はやはり組織の1部品でしかないし、決裁権限も限られているので、自分のキャリアを早く築きたいのであればスタートアップは多くのチャンスを与えてくれるでしょう。

 そのスタートアップに合う合わないとか、どういうポジションを任されるかとか、その企業はそもそも存続するかというリスクはもちろんありますが、ちゃんとそこを吟味してやれば、とてもいい経験ができるように思います。

 仕事って、自分事にしてやらないと身につかないんです。やらされている間はやはり身につかないと思っていて、本気でなれる環境が大企業で見つかれば別にそれはいいのかもしれませんが、それをもっと思いっきりやれるところという点では、スタートアップは非常に魅力的な選択肢かなと思います。

ーありがとうございました。

(文・編集)浅田茉美

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