スタートアップを選んだ決め手は留学中に得た価値観

就職は人生でも大きな選択のうちのひとつ。留学経験が就職に影響を与えることはあるのだろうか。留学で身についた「スキル」ではなく、「価値観」が就職の選択肢を大きく変えたと話すのは人材系スタートアップ・未来電子テクノロジー株式会社でマーケティングを担当する窪田佳奈さん。
スタートアップに就職するに至った経緯と当時の心の動きを詳しくお話しいただいた。
未来電子テクノロジー株式会社 https://www.miraidenshi-tech.jp/
「企業と学生のあいだにあるギャップに橋をかける」をミッションとし、学生との相互理解のための企業広報を継続したことにより、現在は大阪・京都でインターン生在籍120名、月間応募者100名となる関西で最も多くのインターン生が集まる。
プロフィール
神戸市外国語大学で専攻していたイスパニア語を始め、語学の習得を求めてスペインとカナダに語学留学。帰国後は、関西で100名以上の学生受け入れをしている未来電子テクノロジーで長期インターンを始める。インターンを通してHR業界に興味を持ち、そのまま19卒で入社。
1.初めて海外に触れた高校時代
―窪田さんは高校時代にも留学されていたんですね。
はい。福井県がやっていた2週間の短期留学プログラムで、留学先としてはカリフォルニアとサンディエゴでした。カリフォルニアではアップルバレーという内陸のすごく田舎にステイして、留学生の受入経験が豊富な方だったのであちこち連れて行ってもらって本当にいい体験ができました。
サンディエゴでステイしたのはメキシコ移民が多いところで、街並みがかなりメキシコっぽかったのを覚えています。
―プログラムに応募したきっかけは何かありましたか。
当時行っていた高校では周りが海外に行ったことある人が多く、私だけ海外に行ったことがなくてそれが劣等感につながっていました。そこで短期留学のプログラムを見つけて参加しました。
―それで帰国して、いったんは理系の大学を目指されたと。
実は私、理系だったんです。当然のように理系の大学に行くものだと思っていました。しかし結果はあえなく惨敗。落ちた後にどうして理系の大学に行きたかったんだろうとよくよく考えると、一番は今まで理系で頑張ってきたんだから理系の大学に行かなきゃいけないという固定観念に凝り固まっていました。
本当は心の中で外国語を学びたいという気持ちがあったんです。なので、理系の大学に落ちたことで奇しくも自分の興味と向き合うことになりました。
スペイン語を選んだのも、高校時代に短期留学したサンディエゴでスペイン語文化圏に接したからです。こんな面白い言語あるんだ、と思って。
―本格的に留学を経験されたのは外語大に入られてからですよね。
そうですね。外大に入った時点では語学を内心甘く見ていた部分があって、「外国語なんて余裕だろう」とちょっと見下してたんです。でも入ってみたら全然違って。周囲は帰国子女ばかりで外国語を話せるのが当たり前。特定の議題について議論する時も、私はその前の段階で話すことができないから、そんなことで苦労している自分が悔しくて悔しくて。
スペイン語も英語もそうだったから、それを克服するために再び半年間の留学を決めました。
2.スペインへの長期留学
―留学は就職を見据えて?何やりたいとか考えていた?
その頃は、航空管制官をやりたいと思ってました。なんかかっこいいという理由で。海外と関われる仕事がいいというのがありましたね。
けど留学して大きく価値観が変わりました。
―どういう変化があった?
スペインで仲のいい友達と飲みに行った時、友達が「今が楽しいのが一番!」と言い切ったのに衝撃を受けたんですよ。
スペインの失業率は17%と非常に高くて、30代になっても親元で暮らし、働き口もアルバイトという生活が当たり前。友達は、その日にもらったばかりのはずのバイト代を全部飲み代に費やしてました。それはその時の発言です。
私は当時典型的な日本人的考え方をしていて、将来のために今を犠牲にするのが当たり前だと思っていた。この日を境に、自分の判断基準の上位に「今楽しいか?」が加わりました。
私、すごく真面目に生きてきたから。そういう価値観の生き方があるんだって本当に驚きました。
けど、就職の話に戻ると今楽しいから就職はスタートアップにしようとすぐに思ったわけではないです。
スペインに行って、そういう価値観があるんだと思って帰ってきて、その次はカナダにワーホリに行きました。英語もやりたかったから。その時に出会った日本人がすごく意識が高くて。留学だけじゃなく長期インターンもやってるんですよ。さらに日本にいる友達もサマーインターンしてるし。私は一体何やってるんだ、やばいぞ、と焦るばかりでした。
カナダで4か月のワーホリが終わって帰国し、私も何かやらなきゃやばいと思って応募した長期インターンがたまたま未来電子テクノロジーだったんです。
―じゃあ、本当に偶然?
偶然です。検索してたまたま上位に出てきたから。よく知らない会社だったけどとにかく応募した。焦ってたから。
スタートアップを意識して探したわけではないけど、根底には人と同じことをしても仕方がないという思いはあったかもしれない。
(入社式にて。写真は窪田氏提供)
3.最後まで迷った就職活動
―偶然入ったスタートアップだけど、やってくうちに何か変化があった?
最初は本当に、履歴書に書ければいいやくらいの気持ちだったんです。けど、1年半インターンをやってすごく変わった。最初はライターという簡単な仕事をやって、続けていくとホームページの管理やマーケティング回りをだんだんと任せてもらえるようになった。
最初は何もやりたいことがなくて白紙の状態だったんですが、できるようになったり任せてもらえるのが楽しくて、やっていることがやりたいことに変わっていきました。
次のオータムインターン、ウインターインターンはどこに応募しようかなと探す時に、自然と今いるインターン先と同じ人材系を探すようになっていたんです。いい意味で会社に染まっていきました。
―他にもインターンは行った?
インターンは大手だけど人材系に行きました。就活も人材系にエントリーして、選考も進んだので最後まで大手かスタートアップか迷いました。
最終的な決め手は「今が楽しいと知っているスタートアップ」か「環境が変わって楽しいかもしれない大手」の二択。けど、留学中に得た価値観「今が楽しいか?」に従ってスタートアップを選んだ。私は人生を楽しむために生きてるのに、どうして楽しい「かも」のほうに投資しなきゃいけないんだろう?という思いが強かったです。
―親には反対されなかった?
反対されました。留学までしたのに何で不安定なところに行くのかって。
―それにはどう対応した?
私が楽しんでるのと楽しんでないのどっちがいいのって。そうしたら、父が羨ましいって言ってくれて。「好きなことやって、それでお金を貰えて、それを楽しいと思えるってめっちゃいいよね」と。
今は両親とも全然反対してないですよ。
4.学生へのメッセージ
―最後に、新卒でスタートアップに入るか迷っている学生にメッセージをお願いします。
スタートアップを楽しいと思える人と思えない人は二極化すると思います。
スタートアップって変数がすごく多い。制約がないから、ちょっとしたことでどうにでも転ぶんですよね。誰を巻き込むか、予算をどう使うかの制約が大手に比べるとずっと少ないから、責任も伴うし自分で決断しなきゃいけない。それが好きな人はスタートアップが向いてると思う。
まあ、実際は働いてみないと向いてる・向いてないは分からない。だから、迷っている人は長期インターンをしてみることをおすすめします。インターンなら失敗前提だし、違うなと思えば辞めればいい話ですから。
学生の立場を利用して、ぜひ飛び込んでみてください!
―ありがとうございました。窪田さんのお話に多くの学生が励まされたことと思います。
(文・編集)浅田茉美