伝説的VCとの出会いで投資銀行からMBAへ。mitsucari表氏を支えた徹底的な自己分析

企業と応募者のミスマッチをなくす採用支援サービス「mitsucari(ミツカリ)適性検査」、相性のいい企業と応募者をマッチングする求人サービス「mitsucari」を提供している株式会社ミライセルフ。その代表取締役・表 孝憲(オモテ タカノリ)氏は、新卒でモルガン・スタンレーMUFG証券に入社、米バークレー大学でMBAを取得後、共同代表とともに同社を立ち上げました。

なぜモルガン・スタンレーを辞めて留学し、MBA取得後に起業家の道を選択したのか。表氏に自身のキャリア選択について話を伺いました。

勝負師の集まる華やかな世界・外資系投資会社へ就職

ーー表さんは京都大学を卒業後、モルガン・スタンレーMUFG証券(以下「モルガン」)に就職されました。何を軸にして就活し、モルガンへの就職を決めたのでしょうか?

就職活動のとき「自己分析」を真剣にやったんです。もしどんな職にでも就けるとしたら何になりたいか? 私はアメフトをやっていたこともあって「NFLの選手になりたい」と思ったんですね。かっこよくてド派手で、努力すれば一年目から活躍できて収入も得られる点がいいな、と。でも実際にNFLには行けないので(笑)、この要素のある仕事を探したとき、「投資銀行」はどうかと思ったのです。

投資銀行のフロントと呼ばれる仕事は大きく分けて2つ。ひとつは、企業にIPOなどの資金調達やM&Aを持ちかけること。もうひとつは、資金調達したい企業の株や債券を投資家に売ること。私は後者の役割をする「債券部」に興味を持ちました。

mitsucari表氏

債券部の仕事は、マーケットの値動きを見ながら機関投資家や個人投資家に電話して、この債券を買いましょう、この債券は売りましょうと、営業をかけまくります。マーケットは運の要素もあるので、必ず勝てるわけではありません。

しかし研究すれば勝てる確率は上げられるので、一年目でも努力次第でしっかり稼いでいけるし、勝負要素の強い仕事特有の山っ気や華やかさもある。この世界で勝負していきたいなと思って、投資銀行を志望したんです。

一応外資系コンサルなども受けましたが、結果的には最初に内定の出たモルガンの債券部に入社することにしました。

ーー理想的だったモルガンのセールスを7年で辞めて、なぜMBA留学することにしたんでしょうか?

この業界で日本一、いや世界一を目指すつもりで入社したので、すぐに辞めるとはまったく考えていませんでしたし、投資業界に7年在籍したのは長い方だと思います。

辞めた理由は、市場環境・外部環境の構造的な変化です。入社した2006年頃は、金融業界は規制はありつつもイノベーティブなことに挑戦できる環境でした。ところが2008年にリーマン・ショック、その後に欧州ソブリン危機が起きて、世界的にリスクマネーの流入が期待できなくなりました。

今後はおそらく規制も厳しくなって、新しいチャレンジや大胆なリスクテイクもできなくなるだろうと予測がつき、「なんだか面白くないな」と思ったんです。

外部環境が変化する中で、憧れていた先輩たちがよりリスクを取れるヘッジファンドなどに転職していったのも影響しましたね。次第に自分も次のキャリアに移りたいと思うようになりました。

VCとの出会いからMBA留学へーー起業のきっかけは悩み抜いた「自己分析」

ーー次のキャリアを考えたときに、どのような準備をしたんでしょうか?

就活時よりもさらに自己分析をしました。その結果今まで自分は、「世の中がいい」と思うものを基準として選択してきたことに気づいたのです。就活当時の外資系金融もその典型だったと思います。しかしこれからは、世の中ではなく自分の中に「基準」を持とうと思い、自分がおもしろいと思うことをしたり、おもしろいと感じた人に会ったりすることにしたんです。

表氏はたびたび自己分析などの講演も実施

運命的だったのが、ベンチャーキャピタリストの原丈人(ハラ ジョウジ)さんに偶然街中でお会いしたことです。まさに奇跡だと思います。ちょうど原さんの本を読んでいて猛烈に会いたかったので、名刺交換させていただきました。原さんはサンフランシスコで財団とベンチャーキャピタルを持っていたのですが、この出会いをきっかけに、財団の方で1週間インターンさせてもらえたんです。

他にもいろいろなことを試す中で、私は財団やNGOよりもビジネスの世界で自分の可能性を広げたいと考えました。私がワクワクするのは、誰かを助けるという要素だけじゃなく、お金儲けや派手さ、人間の「欲望」に近い要素が入っている仕事だったんです。それを極めるにはMBAを取るのが一番イメージに近いと思い、バークレーに留学することにしました。

ーーバークレーで過ごすうちに起業することにしたそうですね。それはどのようなきっかけだったんですか?

原さんに会ってバークレーに行くまで、ベンチャーやスタートアップには縁のない人生でした。しかしよくよく考えると、華やかさや山っ気があって、努力すれば年齢関係なく収入を取れるところは、投資銀行と似通っているんですよね。そこからVC(ベンチャーキャピタル)にも興味をもちはじめました。

ところが2013年当時にアメリカでVCになるのはとても難しかったんですね。それにVCは起業家と同時にリミテッドパートナー(LP)のことも気にしなくてはならないことがわかって、理想とは違う気がしてきました。

「起業家として自分のやりたいことに向かって突き進んでいる人を応援したい」ということが、自分の本当にやりたいことではないか。これまでの人生を思い返すと、同じような気持ちで過ごしていたように思います。だったらこの思いをアイディアとして起業してみたらどうかと思いはじめたんです。

バークレーでは「アントレプレナーシップ(起業家論)」という、私の人生を変えるほど素晴らしい授業も受けられました。起業や投資はやりたいことを叶える手段だから、自分のやりたいことを真剣に考えるべきだ、と。だから若干鬱になるくらい真剣に考え続けました。

そしてふと、これほど「やりたいこと」について考えるということは、やりたいことについて考えることが単に好きなだけではないかと気づいて、やりたいことを明確化させるサービスを作っていこうと思ったんです。

ーー起業することになった決め手は何だったんですか?

投資を受けられる可能性を感じたことですね。日本で投資を受けるのはとても難しいイメージがあったのですが、同時期に留学していた友人が資金調達できていたので、自分にも可能性があると思ってトライしました。バークレー卒業の2ヶ月前から10社ほどに事業プレゼンをして回った結果、ある投資家から投資を受けられることになり、起業することにしました。

ーー投資を受けてミライセルフを立ち上げたわけですが、最初から今のサービスを提供していたんですか?

いえ、最初は「メンターを探せる」という謎のサービスでした(笑)。自分と近い考えの人からのアドバイスなら真剣に聞くかなと思って。私自身、モルガンに入社するときに「お前きっとすぐ辞めるよ」と言われたことがあり、「お前が言うなよ」と反発した経験があります。

でも結果的に7年後に辞めたということは、もし当時からメンターにアドバイスをもらっていたら、もっと早く今の道に来れていたかもしれません。だから性格検査をして近いタイプの人をメンターとして表示しマッチングするというサービスを作ったんです。

このアイディアをマネタイズできるように改良したのが、現在の「mitsucari適性検査」です。サービスがリリースされてからも紆余曲折はたくさんありましたが、なんとか4年間続けてきました(笑)。

mitsucariの適性検査。診断結果をもとにマッチする求人を提案してくれる

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そのリスクヘッジは本当に必要? 「本当にやりたいこと」に挑戦する勇気

ーー安定した企業を辞めて留学するとキャリアが分断されたり、その後スタートアップに務めると収入が減少するリスクがあると思います。これらのリスクについてどうお考えですか?

リスクを明確化すればいいと思います。キャリアが途切れるリスクが怖いなら、長期的なキャリアプランを明確にすることで、MBAが必要なステップだと認識できますよね。収入が減るのが怖いという人もいると思いますが、実際に自分がいくらあれば生活できるのか把握していますか?

その金額を明確にしていないから不安なだけで、実は年収500万円ほどあれば暮らしていけるケースは多いですよ。リスクを理由に留まるのではなく、今度のライフプランを元に必要なお金を計算して、それを払えるスタートアップだったら就職できるでしょう。

私も起業する際は収入面に不安を感じていたのですが、アメリカで実際に起業した人のデータを見ると、500万円〜1,000万円ほど収入を取っていたんです。はじめからそこまで取れるかはわかりませんが、可能性はあると知って気が楽になりました。

ーー最後に、MBA取得や留学を考えている人へアドバイスをお願いします。

留学中はとても忙しく嵐のように時が過ぎていきますので、「仮説を持って行動する」ことをオススメします。留学中は世界中で活躍しているさまざまな人に会う機会があるので、自分のやりたいことや知りたいことを言語化してからアプローチすれば、自分が何にワクワクするのかを深く知るための精度の高いABテストができますよ。

留学後、名もないスタートアップでキャリアを再スタートする不安もわかるので、最初は大手企業に就職してから、起業に挑戦するというプランも現実的だと思います。ただ若い時のフレッシュな思考力や体力は、有限です。「今ここで何をするか」ということをきちんと考えるべきだと思います。

きついことを言いますが、MBAを取ってまで自分の理想とするキャリアに挑戦する勇気がないなら、スタートアップなんて一生ムリだと思います。あなたの想定するリスクヘッジは本当に必要でしょうか。

どこにいても常に結果を出し続けていれば、あなたは引く手あまたになるでしょう。とくにスタートアップにナンバー2やナンバー3で入社し、会社を大きくしたキャリアは今後重宝されると思いますよ。大企業・スタートアップとも、それぞれのリスクがあります。だったら「自分の本当にやりたいこと」に舵を切る勇気を持ってはどうでしょうか。

mitsucariの適性検査のサイトはこちらから

(文)金指 歩

(取材・編集)納富 隼平

 

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