日米のスタートアップ、大企業両方と働いて見えてきた全てに共通する大事なもの

 ベンチャーカフェ東京 漆原氏

少年の頃から海外で学んできたという漆原さん。レッドソックスという大きな組織でインゲーム(試合中)ディレクターにまでなれたのは、「仕事が、人が好きだったから」だといいます。
その後MBA、日米双方でスタートアップを経験され、現在ベンチャーカフェ東京(Venture Café Tokyo) でご活躍中の漆原さんに、日米のスタートアップの違いや大企業との違い、そして人生の節目で迷っている方たちへのメッセージをお話しいただきました。
*トップの写真は元クラスメートで現職同僚の小村氏とオフィスの前で

ベンチャーカフェ東京 漆原氏

 プロフィール 漆原 琢雄氏

ベンチャーカフェ東京 Director of Operations  米Northeastern University卒業後、Boston Red Soxのビデオ部とマーケティング部に7年間勤務。球場内、ネット、テレビ上のプログラミングのディレクションを担当した。アート、イノベーション/スタートアップ、不動産等の多様なビジネス背景を持ち、Babson College F. W. Olin Graduate School of BusinessでMBAを取得。

英語の勉強のために海外へ

――海外生活が長いと伺いましたが。

英語を習う目的で、中学からボストンに行きました。大学はノースイースタン大学です。ここは「働きなさい」という意識を育てる学校で、2年生からは6カ月おきに、仕事、学校、仕事、学校……と行って5年かけて卒業するんですよ。仕事を経験しているため就職に有利で、リーマンショックで景気が悪い時にも、大学院に行く以外は、みんなちゃんと仕事についていました。

 その後、レッドソックスで仕事をしていた時、事業をやっていた父が亡くなり、一人息子なのでいろいろと降りてきたんです。その時、先祖代々とリプレゼントしながらビジネスの方向性を決めることが自分ではできず、「もうすこし勉強したほうがいい」と思ったんです。MBAに応募して、バブソン大学でビジネスを勉強することにしました。

卒業後にアメリカで1年間スタートアップを経験し、日本に戻ってベンチャーカフェの立ち上げに参加して、1年5カ月になります。

Boston Red Sox (レッドソックス)では「好きだから」頑張れた

レッドソックスには、ちょうど松坂選手と岡島選手が入ってきたタイミングで、インターンで入ることができました。仕事は、試合中は野球の選手のプレー以外、球場内で見えるもの聞こえるものは全部です。試合が無い日は、自分はビデオ部でしたから、ファンとのふれあいのビデオを編集したりするのを中心にやっていました。

 ――ワークオフィス全体で何人ぐらいだったんですか。

 300~500人ぐらいです。ボストンのスポーツビジネス文化は貴重なものであり、特にメジャースポーツ、レッドソックスを含め、普通の大企業とちょっと違っていて、ただでも働きたい人が大勢います。給料が無くても、スポーツ好きの自分はそこでのインターシップを確保したかった。

アメリカではイニシアティブという言葉があって、どれだけ自分が頑張っているかを人に見せるほど、信用されたり使われたりします。自分はマーケティング/ビデオも好きだし、その上にまだいっぱいやりたいことがあるので、自分の言われた仕事はしっかりやったうえで、チャンスがあればいろんな仕事を取りに行って、めちゃくちゃ頑張った。その頑張りと信頼のお陰で最終的にはチーム内のバスケットリーグのキャプテンにも慣れた、そのおかげでますますチーム内の交流/、たくさんの人と知り合いになることもできました。

そうしているうち、最初「絶対出ないよ」と言っていたビザも出してくれましたし、

5年間で試合中のディレクター(ゲーム内のエンターテインメントを運営するコントロール•ルームのキャプテンのような役目)までいき、試合の前のプリーゲームセレモニー、国歌とかを仕切るのも、全部自分になったんです。2008年には「Employee of the Season」も獲得しました。

ベンチャーカフェ東京 漆原氏

(レッドソックス時代の写真。漆原氏提供。)

――その後、お父さまが亡くなったのをきっかけに、バブソン大学に行かれたのですね

 はい。 一人息子なので企業から落ちてきたものを受け取るとき、先祖代々とリプレゼントしながらビジネスの方向性を決めるのは、自分ではできず、絶対勉強したほうがいいと。

ちょうどその時にレッドソックスからのビザも切れ始めていて、次のステップを取らないといけなかったし、結構どんどんと落ちてきたので、「これはなんか違う道を進んだほうがいいんだな」という気がして、MBAに応募しました。そこでクラスメイトの小村と会いました。

アメリカでスタートアップに参加

 アメリカはOPTというプログラムがあって、卒業後に1年間、学生ビザで働く権利をもらえます。

「この機会を絶対に生かしたい」と思って、バブソン卒業後は、クラスメートのアビースパイカーが立ち上げたばかりのダートドローンズで、1年間働かせてもらうことにしました。

小さい形でやっていきたい、スタートアップの世界を見てみたいというのもありましたし、もちろんドローンにも興味がありましたが、「友だちがいるから」というのは大きかったです。

 ――DARTdrones (ダートドローンズ)ではどんなお仕事をされたのですか

 お客さんを増やす、ブランドのイメージを良くすることはもちろんですが、自分はまだ3人目でしたから、ほとんど全部やりました。その後何人かに声をかけて、8人ぐらいになりましたね。

スタートアップは全部自分たちでやり遂げなければいけない。これどうしよう、あれどうしようと、毎日ストラテジーが変わっていく世界で、「今日これやって、やっぱりやめて、明日これだ」みたいな感じでした。

でも集中する時は集中します。チームの頑張りも有り、アメリカで有名なシャークタンクというテレビ番組にたどり着くことができ、やっている事が良い方向に進んでいて、認めらていると言う形が少しずつ見えるようになりました。、そこの経験は大きかったと思います。

ベンチャーカフェ東京 漆原氏

 (ダートドローンズ時代の写真。漆原氏提供

仲間とのつながりで、ベンチャーカフェへ

日本に帰ってファミリービジネスをきれいにして、「またアメリカに戻ろうかな」という時、山川と、小村から、「ベンチャーカフェ手伝ってください」という連絡が来たんです。小村は、バブソン大学でのクラスメートでしたから、知っている人と働けるし、ボストンとの関係性も保てるし、純日本系のカンパニーでもないし、日本のネットワークも広がるし、「これいいかもな」と。話をもらって1週間後には出勤しているという、とにかく即決でした。

 ――仕事の進め方はどうでしたか

 最初は全部取りに行かなければいけないし、ハードスルーがあったりしてたいへんでした。でも、20~30人だろうと思っていたThursday Gatheringに、オープン当初から平均120人も来てもらえた。

今は見せ方や雰囲気を上げ、楽しめる場所になってきたことで、インバウンドも入ってきていますし、260人という規模になりました。アンバサダーとか、多くの方に手伝ってもらっていて、すごく感謝しています。絶対彼らがいなかったら達成できないことですね。

日米で、スタートアップに違いはあるか。大企業との違いは?

 ――レッドソックスという大きな組織と、スタートアップであるダートドローンズを経験されて、どんなところが違っていましたか? 

 「ルールを守らなければいけないところ」と、「何でも挑戦できるけれども、自分たちで全部やるところ」といった違いがあります。

レッドソックスでは、インターンから育ててくれた人がいましたが、ダートドローンズではアドバイザー的な人がいないので、「こうしたらこうなっていたんじゃない?」と、自分が見えていない世界を教えてほしかったというのはありますね。

 ――上下関係はどうですか?

 レッドソックスでは上下関係があって、トップや選手は特別な存在です。でも、優勝パレードに誘ってくれたりと、面倒は見てくれる。スポーツビジネスは山あり谷ありの世界なのでチームが良い結果を出せばみんながハッピーだしもちろんその反対もある、日本のスポーツ会も似ているところはあると思います。

ダートドローンズでは上下関係はありませんでした。テレビ出演をためらうCEOに「絶対にこの機会を生かすべきだ、こう言うチャンスは見逃すのは勿体無い」と助言したくらいです。

 ――同級生が入った、他の大企業はどんな感じでしょうか。

 大企業だと、自分のジョブしかやらないのが普通で、9時-5時で毎日同じことをやっていたようです。自分はそれが嫌でした。毎日が違うという世界が好きなんです。

 ――レッドソックスとダートドローンズの良いところと悪いところを教えてください。

 スポーツが好きなので、レッドソックスでは、自分の持っているパッションで働けたのが良かったです。部のメンバーも、人がよくて大好きでした。それはラッキーでしたね。好きでなければ毎日長い時間同じ人たちと働け無かった思います。

ダートドローンズも同じです。好きな人だから話しやすいし、悪いことを言われても受け止められる。人間と人間の関係性はすごく大切だと感じました。

 悪いところとしては、動き方が早いか遅いかというのが少しあります。あと、いい悪いではないですが大きな違いとしてはブランド名の影響はすごいですね。ダートドローンズと言っても「は?」という感じですが、レッドソックスと言うだけで「えっ!」って。

――アメリカだから、日本だからというスタートアップの違いはないですか?

 日米の違いは感じません。ただ、いきなり別の国で立ち上げようとするのは、習慣も異なるし、すごく大変だと思います。アメリカ人が日本でThursday Gatheringをやろうとしたら無理だし、自分たちがむこうでやるのも難しかったと思う。カルチャー、言語などのニュアンスを理解した上で、ローカライゼーションを入れなかればいけないしレギュレーションも有ります。特に、アメリカはビザがなかなか取れないですし。

 

(ベンチャーカフェ東京では毎週木曜日にThursday Gatheringイベントを開催)

スタートアップは怖くない。学生さんに伝えたい大切なこと

 ――学生さんからよく「ベンチャーやスタートアップは怖くないですか?」と質問がありますが。

 この10年20年、世界中スマホの時代で「今」が中心の世界になってきています。もし、自分が何をやり遂げたいか考えていないところがあるなら、もしかしたら、すごくもったいないかもしれません。

本当にお金に困っているのなら、安定するまで大企業に入ると言う手はもちろんあると思う。だけども、スタートアップには、自分が見て見たい世界、作り上げたい未来に進む事ができる。自分が何かやることで会社を変えられる力があるし行動した結果がよく分かる、トップからの指示を待たないで行動できる世界もあります、反対にトップと一緒に考えて次のアクションステップを生み出すこともある。

 自分を咲かせる人生を学んでほしい。小さくてもいいから「やり遂げた!」というゴールをどんどん設定していったほうが、人生は楽しいです。そのときは、ぜひ「好き!」(Passion!)を大事にしてほしい。好きなことは積極的にできるし、前向きに考えられる。何より、仕事を楽しむことができます。それに、興味を持てば間違いもよくわかり、直していけるから、仕事もうまくいくんです。

 そして、もう一つ大切なのは、人との関係性を保つこと。新しい人と会って学んでいくとか、助けを求めるとか。仕事を達成していくには、独りではできないことが多いです。レッドソックスでもダートドローンズでも、それはすごく感じました。それに、バブソンで一緒の学校に行った仲間がいたから、今のベンチャーカフェがあるといえます。

人と人との関係性を大切にしてほしい、これを皆さんにはお伝えしたいと思います。

 最後にスタートアップの世界を知りたい人はぜひThursday Gatheringに参加してみてください。そこで人生を変えるような出会いがあるかもしれません。

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