「もっとできた気がする」ビザスク創業者・端羽氏が語るMBAを200%頑張るわけ

ビザスク創業者・端羽氏

日本最大級のビジネス特化型スキルシェアサービス「ビザスク」。業界調査やユーザーインタビュー、新規事業や海外進出の情報収集など、経験豊富な「その道のプロ」に、1時間から相談できる。J-Startup企業にも採択されている注目のスタートアップだ。

株式会社ビザスクの代表取締役CEO・端羽英子氏は、子育てをしながらMBAを取得し、その後ビザスクを起業。子育てとの両立をしながら起業を志して留学したのかと思いきや、事情は少し違うようだ。いつでも素直に生きる彼女の留学と起業について、詳しくインタビューさせてもらった。

夫の留学をきっかけにボストン・MITへ留学

――端羽さんは東京大学卒業後、ゴールドマン・サックス証券投資銀行・日本ロレアルを経て、MIT(マサチューセッツ工科大学)にてMBA取得、という輝かしい経歴をお持ちです。ただ、その留学理由が個性的だと伺っています。

当時の夫がボストンに留学することになったので、一緒についていったんです。

ビザスク創業者 端羽氏

ロレアルに勤務していたのでニューヨークへの転勤を希望したのですが、確実な答えはもらえなかったんです。で、当時の上司に相談したら、「子どもが小さい時期くらいしか家族と一緒にいられないのでは?」と言われたんです。たしかに子育てをしたい気持ちも大きかったので、ロレアルを退職して家族で渡米しました。

学生であれば子育てと両立しやすいかな、と思い、歴史が好きだったこともあり彼の受ける大学それぞれの歴史学のPh.D.コースを受験したのですが、学部も歴史学ではないですし、当然のことながら全て不合格。

幸い行き先がボストンに決定し、であれば良いビジネススクールがいくつもあるので、これはもう、ビジネスに生きるしかない!と思って、歴史学者になる儚い夢を諦め、ビジネススクールを受けることにしました。

――学生なら子育てと両立できると思って、ビジネススクールに行ったと。なぜMITに通うことにしたのですか?

受験したのは、MIT・ハーバード、ボストンカレッジ、ボストン・ユニバーシティ。ハーバードは不合格で、MITに決めた理由は、学校見学に行ったときに案内してくれたアメリカ人女性が、とても親身に関わってくれたからです。

私は予備校に通わずGMATやエッセーの準備をしていたので、「エッセーに書くネタがなくて」と彼女に相談したら、「『young Japanese working mother』と言えば受験生の中でたった1人になれる。あなたには差別化するいいキーワードがある」、「MITのMBAはclose-knit communityなところが魅力で、育児との両立もきっとやりやすいから、それを書けばいいよ」」などのアドバイスをくれました。そのおかげでMITに親近感を感じて、ここに行きたいと思ったんです。

――MITでの学生生活はいかがでしたか?

久々の学生生活は楽しかったですね。聞いていた通り、MITはコミュニティが小さいからか、学生同士の競争が少なくて仲がいい。子どもがいたので独身寮に住んだり夜な夜なイベントに参加したりはできなかったけれど、それでもみんな仲良くしてくれました。今になっても「日本に行くからちょっと会わない?」と連絡が来ることもあるんですよ。

――学生の人種や男女の割合はどういった感じでしたか? また、印象に残った授業について教えてください。

MITはアジア人が多く在籍していましたね。女性比率を上げる試みをしているそうで、女性が2~3割いましたが、ママさんはさすがに少数でした。

「young Japanese working mother」の真価を発揮できたのは、あるグローバル企業が日本と海外とでマーケティング戦略を変えた理由について議論したとき。他国の生徒からは全然正答が出なかったのですが、私が「お姑さんが反対するから」「mother‐in‐lawが怖いから」と発言したところ正解でした。姑やママ友の目なんて、たしかに私じゃないと思いつかないですよね。

また、マクロエコノミーの授業で日本の景気を改善する方法について議論したとき、私は「女性活躍」を推したんですが、先生は「移民推進」を取り上げたんですよね。移民推進というと、日本だと難しそうに感じますが、海外からは別の見え方をしているんだなと感じました。外から見た日本についてディスカッションしたことは、今でも記憶に残っています。

ビザスク創業者 端羽氏

自分の常識を破壊してくれたアメリカ

――子どもを育てながらMBAに通ったことで、何か印象に残っていることはありますか?

あの時期は留学と同じくらい、子育ても大事な時期でした。そんなときに学問やビジネスについてアンテナを高く立て続けることは難しいので、MBA取得が強制的にアンテナを高くしてくれたのはありがたかったですね。

また、アメリカは寄付やボランティア活動がさかんで、授業でも「自分がどんなボランティア活動をしているか」について話す機会があったんです。

そのとき子どものいる女性が、「自分はすごいボランティアをしている」と。「子どもを育てている。これが社会に対するボランティアじゃなかったら、いったい何?」と言ってのけたんです。すごい勇気のある発言だと思いましたね。

――アメリカで生活して、意識の変わったところもあったのでは?

自分の中の「こうあらねばならない」という常識が変わりました。ビジネススクールは世界中から賢い人が集まっている場なので、そこで議論された内容には説得力があります。自分の意見との違いがあるのも、大きな刺激でした。

私生活だと、アメリカの幼稚園もお弁当を持たせるんですが、他の子どものお弁当を見たら、ジップロックに入ったパスタを直接フォークで食べている子もいて。もはや何でもありだなと(笑)。自分の常識が世界の常識じゃないんだと感じました。子育ての「あらねばならない」がずいぶん減って、楽になりました。

振り返ると「もっとできた気がする」。家族持ちこそ頑張るべき

――卒業後は、プライベート・エクイティ(PE)のユニゾン・キャピタルに転職されていますね。

卒業後は起業するつもりで、エッセーにも「アントレプレナーになりたい」と書いていました。ただMITはバイオテック系に強い学校だったので、キャンパスに来る卒業生やベンチャーキャピタルは、技術系の方たちばかりだったんですね。だから、技術力のない私が起業して何ができるんだろう、という疑問がありました。

何か強みをつくらなきゃと思ったとき、私の強みは金融x事業会社の経験じゃないかと思ったんですね。ベンチャーキャピタル(VC)に行く選択肢も考えましたが、当時は、アメリカから見ると日本ではVCがアクティブに動いていないように見えたので、元々興味もあったPEに進むことにしたんです。

ビザスク創業者 端羽氏

――PEで勤務した経験は、ビザスクを立ち上げるときにどのように役立ちましたか?

お金の集め方を知っていたので、CFOを兼ねられたのは大きなプラスでした。私はプロダクトやマーケティングに詳しいわけではないので、せめて「私がお金を集めてくるから心配するな」と言えたことは強みだったと思います。

――これから留学する人に向けて、おすすめする留学中の過ごし方はありますか?

留学が終わったあとに絶対「もっと頑張っておけばよかった」と思うに違いないので、できる限り頑張るべきだと思います。私は子育てを言い訳にして、わりとのんびり過ごした方でした。授業をサクッとこなして、行き帰りの電車の中でだけケースを読んで。

チーム課題も結構ありましたが、周囲のみんなが優しくて「英子が夜集まれないなら日中にやろう」と調整してくれたり。でも留学中って、無理をしてでも頑張る時期だったなと後から思います。

――もう一度留学したときは、もっと頑張れるな、と?

「もっとできた気がする」という気持ちは、留学だけでなく今も常に感じています。だから今しかできないことを120%、いや200%頑張りたい。

MBAに関しては、家庭のある人こそ頑張ってほしいと思っています。私は子育てとの両立を前提に留学しましたが、仕事と比べると学生は「お客さま」だから両立がやりやすいという意識が強かったなと。たしかに留学中は、現地で家族と過ごせる大切な時間ですが、家族とはそれからも一緒にいますから。私ももっとがんばって、仕事並みのパフォーマンスを出せばよかったなという気もしていますね。

ビザスク創業者 端羽氏

進路に迷うならまず大企業へ。でもスタートアップは早いフェーズほど面白い

――留学後の進路について、大企業とスタートアップで迷う人も多いのですが、端羽さんはこの点どうお考えですか?

大企業に行きたいと思うなら、一度行ってみてはどうでしょうか。成長しているスタートアップなら優秀な人に対していつでも門戸を開いているので、どんなタイミングでも入れるはずですし、入ったら入ったで迷っている暇はないと思うので。ただ、スタートアップは早いフェーズの方が面白いと思うので、気になる会社があるなら早めにジョインすることをおすすめします。

――ビザスクは2012年に創業して現在7年目。今ビザスクに入る面白さは何だと思いますか?

2016年時点で10人だった社員が今は80人を超え、勢いよく伸びている最中です。立ち上げ当時のように「明日潰れるかも」というフェーズは超えたので、新しいことにチャレンジする余裕も出ていますね。そういう意味で面白いタイミングではないかと思います。

ここ2年ほどで変わったのは、ビザスクを利用するクライアントに大きな法人が増えたこと。社内ではグローバル専任のチームを作り、日本のクライアントにグローバルなアドバイザーもマッチングできるようになりました。

1年前には「エキスパートサーベイ」というビザスクらしい新規事業もリリース。さまざまなチャレンジを同時並行で行えるようになったことが、最近の大きな変化ですね。

――最後に、留学生や就活生に向けてメッセージをお願いします。

大企業とスタートアップで迷うなら、スタートアップはkeep in touchしておいて、まず大きいところに行ってみたらいいと思います。迷わないで決めるっていう時がスタートアップに入る時な気がします。

ビザスクでも優秀な人材はいつでも大歓迎。早いフェーズで入った方がいいポジションをとれるとは思いますが、だからといって将来の魅力が劣るわけではありません。今後も、今とは違う魅力をどんどん作り、会社をさらにバージョンアップさせていきたいと思っています。お互い、今しかできないことを120%、いや200%頑張っていきましょう!

ビザスク創業者 端羽氏

 

(文)金指 歩 (取材・編集・写真)納富 隼平

 

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