ミドル層(30代40代)の起業、スタートアップへの転職はぶっちゃけ怖くないですか。そこでミドル層に投資しているXTechの波多江さんに聞いてみた

XTech 波多江氏

「事業と投資両方やりたい」と望んでいた波多江さん。現在XTech(クロステック)に1号社員として入社し、それを叶えていらっしゃいます。30代での、東証一部上場会社からの転身。自らの経験をもとに、特にミドル層で起業やベンチャーへの転身を考えている人たちへのアドバイスなどをお話しいただきました。

XTech 波多江氏

プロフィール
2006年慶應義塾大学法学部卒業後、サイバーエージェントに入社。広告代理部門、スマホメディア、オークション事業立ち上げ、子会社役員等を経験。2014年からはサイバーエージェント・ベンチャーズ(現サイバーエージェント・キャピタル)で投資担当。その後、XTechに1号社員として入社、XTech Venturesパートナー、イークラウド株式会社取締役。新規事業と投資業を両立させるべく奔走中。

会社概要

XTechは既存産業×テクノロジーで、多発的・非連続的にベンチャーを創出し続けるスタートアップスタジオです。今世の中はAI、IoT、ブロックチェーン、5Gなどの新しいテクノロジーが様々な産業に浸透して異業種での化学反応は起こり、劇的、加速度的に世界が変わるフェーズにあります。テクノロジーと掛け合わせることで劇的に変わる既存産業の変化をビジネス機会と捉え、様々な分野のスペシャリストが新規事業によって非連続的に新しい価値を生み出していきます。

2018年1月に設立してから現在までに、新規設立・買収した子会社等の数は9社に及びます。

XTechグループの会社説明資料
https://speakerdeck.com/raimuizumi/xtechzhu-shi-hui-she-hui-she-shuo-ming-zi-liao

未来をつくる仕事がしたいと、インターネットの業界へ

 最初の就職について教えてください。

 大学時代は法学部でした。司法試験の受験勉強をする中で法律というのは過去に定めたルールや過去の人が考えた裁判例を学ぶ性質が強い学問だと感じるようになり、どうせなら「もっと未来をつくる仕事をしたいな」と思うようになりました。就活で「やるんだったら、過去のルールが無い、新しい産業の方が面白い」と考えていたところに、出会ったのがサイバーエージェントです。

 最初は広告代理部門で、大企業のWebマーケティングを支援する仕事をしていました。そこでは、モバゲータウンを開発したDeNAや、登録者の70%が3日以内にログインしていたSNSのmixiといった、インターネットの新しいサービスが次々生まれて、四半期に更新される媒体資料には毎回すごい勢いで右肩上がりになっているグラフを見ていました。自分もどこかのタイミングでそういった、急成長する事業を創りたいと思い続けていました。

 5年ぐらいたった頃、スマートフォンブームが到来しました。これはまたとないチャンスだと思って、「新規事業をやりたい」と申し出ました。スマートフォンの登場によって、その手軽さから写真によるコミュニケーションが起き始めて、Instagramも流行り始めていました。そこで、写真のコミュニケーションにお買い物機能をつけるイメージで、スマホオークション「パシャオク」をつくりました。その後、パシャオクは戦略的に子会社になり、役員も経験しました。

 その後、サイバーエージェント・ベンチャーズに行かれたということですね。

 パシャオクの成長が停滞する中、メルカリは急成長していました。上場会社の恵まれたリソースと資金を提供されていた自分は絶対に負けることは無いと妄信的に信じてやっていましたが、数人で始めたベンチャーに成長率が全く届きませんでした。何億円も会社のお金を投資してもらったのに、ベンチャーの成長率に大敗し、絶望しました。絶望の末に、責任をとって辞職し、「外の世界を見よう」と思いました。

お世話になった人たちに相談する中で、グループのサイバーエージェント・ベンチャーズであれば、起業家の支援を通じて、世の中のビジネスが良くわかりそうだと教えてもらい、志願して転籍させてもらいました。サイバーエージェント・ベンチャーズでは起業家を支援しながら本当に多くのことを学ばせてもらいました。

グループに結果として13年間在籍し、広告から始まって事業、投資と、複数の職種を経験させてもらい、本当に貴重な時間でした。今、自分が学生だったら、サイバーエージェントに就職したいです。入れてもらえないかもしれませんが(汗)。

30代で動けないのはもったいないと、転職を決意

 次の仕事についてはどのように考えていましたか?

 まず、大企業は考えませんでしたね。「次の新しい大きな産業をつくりたい、会社をつくることをやりたい」というのが元々ありましたから。次にやることが決まらず、退職後一定期間、無職になっていましたので、どんなリスクでも取れる状態だと前向きに捉えました。今なら起業でも何でも自由にやるだけだ、選べると。「上場会社の社員という収入も信用もゼロになったわけだから、ここがどん底だ」と考えました。

 次の可能性を探る中で、起業するか、投資家として独立するか、未上場企業に入社するか、など色々な選択肢を考えて人に会ってみることにしました。いろいろな人に会う中で、自分は事業も投資もやりたいという思いが強いことに気付きました。普通はどちらかを選択することになります。どうしようかと悩んでいた時、元同僚からXTechを創業していた西條に会ってみたらどうかと提案をされました。その時XTechはまだ、オフィスも社員も無い状態でした。

西條の事業と投資を両立させる構想を聞き、XTechなら自分がやりたいと思っていた「事業と投資」が両立できるかもしれない。と思いました。

 話を聞いて、「これしかない」と、すぐ決めたのですか?

 いえ、元々自分が投資していた会社からも、「幹部として来ないか」と誘われていましたし、 起業も考えました。ですから、決めまるまで、ちょっと期間をおき、慎重に検討しました。

 では、決め手になったのは?

 社員もオフィスもまだ無く、社長一人の会社でしたので、誰と仕事をするか、という基準しかありませんでした。入社前に何度もディスカッションや打ち合わせに同席し、直接相性を確かめたことに加え、お互い良く知っている先輩を頼って西條の性格を聞き込み、できる限り一緒に働くシミュレーションをしました。1号社員が相性悪いとかの方がお互い不幸ですし、それは望んでませんでしたから。

30代で家族がいるのに、上場企業から未上場の会社に移るというのは、リスクとは考えなかったのですか?

 上場会社で事業をやっているときに、未上場の会社に成長率で全く勝てないということを経験したことと、ベンチャーキャピタル業務を経験して、未上場の起業家と日々接していましたで、リスクは全く感じない体質になっていました(笑)。むしろ大企業特有のルールに縛られ、世の中に通用しない人材になってしまうことをリスクだと考えています。

完全に前向きだったんですね。ご家族の反対はなかったのですか?  

家族には「起業する可能性がある。そういうチャレンジをする時は年収は半分になる。」と年に数回、言い続けていました。

今回、「年収が半分になっても、未上場の会社に飛び込んでゼロからチャレンジしたい」と言ったら、「分かった」と。「半分までだったらいいんじゃない?」という話でしたね。「子どもに誇れる仕事をしてね」とだけ言っていました。自分の挑戦を応援してくれて、信じてくれている妻には頭が上がりません。

XTech 波多江氏XTech始めた時の写真(波多江氏提供)

考えて飛び込むミドル層だからこそ勝率は高い

 やりたいことが見つかっても、ベンチャーってなかなか飛び込めないと思いますが。

 数年前まで、ベンチャーといえば年収半分とか無給から始まって、上場するまでこらえ続けるみたいなのが美徳とされていましたけれども、今は新しい産業に対する世の中の期待も増し、ベンチャーに対して投資が集まってきています。先日、日経新聞にベンチャーの平均給料が720万円で上場会社よりも待遇が良くなってきているという報道もされていました。数年で結果が出る世界ですので事業リスクはありますが、待遇面でのリスクは以前に比べて低くなっています。

参考:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42688030Q9A320C1MM8000/

また、資金調達の選択肢としても、ベンチャーに投資するベンチャーキャピタル以外にも株式投資型クラウドファンディングなど、個人投資家からの資金をベンチャーに還流させるプラットフォームも登場しています。XTechグループでも株式投資型クラウドファンディング事業に参入予定で、2018年にイークラウド株式会社を設立しています。新たな資金の出し手が増えることで、ベンチャー起業は今後も成長を続けやすくなると考えています。

参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000036294.html


XTech Venturesのミドルへの投資

 今、ミドル層に向けて投資をされているのですね

 ミドル層(30代40代)は、子どもができたり住宅ローンがあったりする。なかなかリスクは取れませんよね。そんな世代の人たちでもリスクが取れるように、脂が乗っているから勝率が高いというのを信じて投資をしています。その部分を本格的にやっているベンチャーキャピタルは、多くありません。

 20代の頃とはまた全然違って、自分たちの年齢層だからこそサポートできるということもあります。ミドル層の起業家からXTech Venturesのコンセプトなら、自分たちを理解してもらえるかもしれないとお問い合わせいただいて投資に至るケースも増えました。ミドル層の起業家の中には「もう3社目の創業です」とか、上場会社の役員経験者なども何人もいます。

ミドル層で起業に向いている人とは

 仲間集めがすごく上手な人は、脂の乗った周りの人たちとうまくやっていけるので、面白いと思います。資料を全部1人で作って自分で説明するといった、1人で完ぺき主義でやっていくタイプの人は、仲間とやるには合わないですね。

 どんなことを経験した人が合うのでしょうか。

 いくつか型があると思います。まず何かを突き詰め続けることを経験した人は、どこでもその応用は利きます。「面白いものありそうだ」と、特定の領域を研究し続けてきたとか。起業するのもある意味、何かを突き詰めていくことになりますから。

 いま、ITだけでできるサービスはだいぶ出そろっていて、新しいものは少なくなってきています。既存産業にどう入っていくかが、ここ数年のテーマになっています。だからどこかの業界を深く理解しているという人が、今のタイミングでの起業に向いているといえます。例えば不動産であれば、建築系にすごく詳しいとか、ビルのメンテナンス、清掃、何でもいいのですが。特定の業界を骨の髄まで知っていれば、それ自体で起業テーマのひとつになるし、もっとよくできる可能性がある領域なら、マーケットもできると思うのです。それは若い人だとできないことですよね。

ミドル層で転職について

―ミドル層でベンチャーへの転職に向いている人というのは?  

 職選びはセンスです。いいタイミングで、面白いテーマにチャレンジをしている会社に在籍している人は、事業や組織が拡大し、任される仕事が増えて色々な経験ができます。

 ベンチャーは、いろいろな職種のプロたちがうまく集まって、それでやっと立ち上がるものです。MBAも世界中からいろいろなバックグラウンドの優秀な人たちが来ている場という意味で似ているかもしれません。MBAの仲間と過ごす時間が心地よい、と感じられる人はベンチャーに向いているかもしれません。

起業にはそれぞれ、出会うテーマとか仲間とのタイミングもあると思っています。誰もが起業やベンチャーへの転職が向いているとは思いませんがミドル層であってもリスクを恐れずにチャレンジできる環境が整うよう、XTechの事業や、XTech Venturesを通じて活動を続けて行きたいと思います。

― 本日はありがとうございました。

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